認知症の介護

どのように認知症の人をケアすればよいのでしょうか?

バリデーション療法具体的にどのように接すればよいのでしょうか?

 

具体的な実践方法は?

集中してバリデーション行うのは、一日に五分から十分。
繰り返すうちに問題行動の回数は減っていくと言います。

より具体的なバリテーション療法例

たとえば、「夜中に部屋にだれかが忍び込んだ」とお年寄りが言い出した時、「部屋にだれかが忍び込んだのね」とお年寄りの言葉を繰り返します。
その人が視覚的な表現が好きなら「どんな服を着ていたの」などと聞きます。
「怖かったのね。人生で一番、怖かったのはなに」と、極端な表現を使うのも有効です。
こうした会話の中で、お年寄りは人生の苦労を語り、失望や不安を吐き出すことができます。
「心の中にとじこめた思いが問題行動となって現れる。でも、だれかがその思いをわかってあげれば問題行動は消える」というのがバリデーションの基本的な考えです。

(平成14年8月25日 読売新聞・やさしい介護学)

バリデーション療法の現場

痴呆症のお年寄りに穏やかな感情を取り戻してもらうことを目指す「介護術」の実践が様々に進められている。
とりわけ注目を集めているのが、アメリカ生まれの「バリデーション療法」。
これまで困難とされてきた痴呆症患者とのコミュニケーションに取り組んで成果を上げており、日本でも徐々に広がってきた。

寝たきりの男性の目を見つめながら、スウェーデン人看護婦がささやくように子守歌を歌いかけ、ほおを優しくなでる。
男性は気持ちよさそうに目をつぶり、目元に涙をあふれさせた。
さらに涙をたたえた目を開いて、看護婦の目をしっかりと見返した。

岡山県笠岡市にある「きのこ老人保健施設」(篠崎人理施設長)では、二年前からスウェーデンの専門家を招いてバリデーション療法の研修を続けている。

「いつもはほとんど反応のないお年寄りとコミュニケーションが成り立つ瞬間はとても感動します」と篠崎さん。
この男性は八十代で、重度のアルツハイマー病。ふだんは身動きせず、うつろな表情で口を開けたままのことが多かったという。

バリデーション(「認める」という意味)は、アメリカのソーシャルワーカー、ナオミ・フェイルさんが始めたコミュニケーションの技術。
アメリカ、スウェーデンなどで普及し、最近、日本でも取り入れるところが出てきた。

原則は、「痴呆の人をそのまま受け入れる」こと。
痴呆症の問題行動ととらえられていた叫びや徘徊なども、その人なりの意味があるとして介護者は受け入れる。
「真心をこめたアイコンタクト(目と目を合わせること)を保つ」「低い、優しい声で話す」「タッチング(触れる)」といった振る舞いも、「受け入れて、共感する」ための技術として考案された。

高橋誠一・東北福祉大教授(老人福祉)は「介護者が共感することで痴呆の症状が悪化しないことは、介護現場では知られている。
しかし、『共感』はそう簡単なことではない。そのためのテクニックや考え方を体系付けた点でバリデーションは画期的だと思う」と評価する。

「受け入れる」姿勢は徹底している。
同施設内の鉢入れから土を食べてしまう男性がいた。
通常なら「異食」ととらえ、部屋に閉じ込めてしまうこともある行為。
しかし、バリデーションでは、「意味がある」と考える。
家族に聞いて調べたところ、男性は元農家で、現役時代、土の酸性の度合いを調べるため、よく土をなめていたという。

スタッフは、問題行動をとがめるのをやめ、土のうえに食べても害のないコーヒーの出し殻をまくようにした。

やはりスウェーデンから看護婦を招いてバリデーションを取り入れた栃木県のグループホーム「能羅坊(のうらぼう)」でも、「母親のところへ帰りたい」というお年寄りには、「それでは一緒に行きましょう」と出かけることにしている。
途中でお茶を飲んだり、トイレに行ったりするうちに、お年寄りは落ち着きを取り戻す。

管理者で僧侶でもある田中雅博さんは「あなたのお母さんはもう死んでいますと指摘しても不安が増し、症状も悪化するだけ。痴呆の人の主観的な世界を否定せず、尊重して介護することが大事」と話している。

主なバリデーション療法

新聞やホームページに掲載されたものを編集したので、14あるテクニックの全てではありません。
参考としてみてください。詳しくは書物が発行されていますので、そちらお読みください。
(バリデーション―痴呆症の人との超コミュニケーション法 著者 ナオミ・フェイル 藤沢嘉勝)

真心を込めたアイコンタクトをする

かがんだり、座ったりして、認知症の人の目を直接見つめる。信頼を築く。

言ったことを繰り返す(リフレージング)

認知症の人は、相手が自分の言うことを繰り返して確認すると安心する。
声の大きさや抑揚も出来るだけ同じようにする。

極端な表現を使う

最悪、最善の事態を想像させる。
例えば、「この食事はまずい」と文句を言ったら、「今まで食べた中で最悪ですか」と聞く。
それが感情を発散させる手助けになる。

身体に触れる(タッチング)

指先で、ほほの上部に軽く円を描くようになでたり、両手で肩と背中をさすったりして、気持ちを静める。

お年寄りの好きな感覚を用いる

視覚的な表現が好きな人には視覚的な表現で聞く

その他

思い出を話す
はっきりした低い、優しい声で話す
音楽を使い
事実に基づいた言葉を使う

バリデーション(認めるという意味)法では、具体的なコミュニケーションの方法を示しています。
アルツハイマー病の第一ステージである「認知障害」の段階では、「リフレージング(=本人の言葉を繰り返す)」「思い出話をする」「好きな感覚を用いる」「極端な表現を使う」が有効なテクニックだそうです。

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