よく運動し、栄養に気をつけて、昼寝した方が認知症の発症率が下がることが、厚生労働省の研究班(主任研究者=朝田隆・筑波大教授)の研究でわかりました。
生活習慣の改善による認知症予防の成果が確認されたのはこれが初めてで、現在注目されています。
また、アメリカ・コロンビア大学のアルツハイマー病と加齢脳のタウブ研究所では、高血圧・糖尿病・喫煙がアルツハイマー病の危険因子であることを改めて確かめ、さらに心臓病があることも危険因子であることを示しました。
厚生労働省の研究は、茨城県利根町の65歳以上を対象に2001年から2005年にかけて行われました。
希望者約400人に運動や栄養、睡眠の改善を指導し、指導しなかった1500人と比較しました。
具体的には、週3~5回、1回20~60分、音楽に合わせてステップを踏む簡単な有酸素運動を行いました。
また、魚の脂質に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などを含む栄養補助剤を毎日取るとともに、30分以内の昼寝を行いました。
その結果、生活習慣を指導したグループでは認知症の発症率が3・1%だったのに対し、しなかったグループは4・3%に上りました。
また、記憶能力のテストでも、指導したグループの成績が約16%向上しました。
同研究班は、今後さらに統計的分析を進める方針のようです。
(2006年5月27日 読売新聞 参照)
国立精神・神経センターの武蔵病院の朝田隆リハビリテーション部長は、アルツハイマー病患者の発症前のライフスタイルを調査して、比較的長い昼寝を習慣にする人が多いことに着目しました。
337人の患者と、260人の家族へのアンケート調査によると、認知症の初期時症状(物忘れ)に気づいた時期の5~10年前に、30分以内の短い昼寝をする習慣があったのは、家族で58人いたのに対し、患者では19人。
一方、1時間以上の長い昼寝の習慣があったのは家族で11人、患者では40人と、逆の相関関係が見られました。
朝田氏は「アルツハイマー病になりやすいとされる『apoE-4』遺伝子を持つ人でも、発症時期が異なるなど個人差がある。
その差がなぜ起きるのか考えるうえでライフスタイルは重要なカギとなる」と指摘しています。
アメリカ・コロンビア大学のアルツハイマー病と加齢脳のタウブ研究所(Taub Institute for Research of Alzheimer's Disease and the Aging Brain)の J. A. Luchsinger医師らは、 痴呆のない1138人(平均年齢76.2歳)を平均5.5年追跡し、糖尿病、血圧、心疾患および現在の喫煙の4要因とアルツハイマー病発病との関係を調べました。
その結果、特に糖尿病と現在喫煙していることが4つの要因のなかで発病の関係は最も強く、高血圧と心臓病もアルツハイマー病の発病と関係があることを認めました。
今回の報告は、これまでの報告と同様に高血圧、糖尿病および喫煙がアルツハイマー病の危険因子であることを改めて確かめ、さらに心臓病があることも危険因子であることを示した調査報告といえます。
この報告はアメリカの神経学会雑誌「NEUROLOGY 」(2005年:65:545-551)に掲載されています。
オランダのエラスムス医療センターの疫学・生物統計教室のオット博士らは、1990年の調査開始時に55歳以上で痴呆のない6870人について喫煙中、喫煙経験あり、喫煙経験ないグループに分けて追跡調査をしました。
すると、調査機関中に146人が痴呆を発症し、このうち105人がアルツハイマー病でした。
この結果、喫煙する人ほどアルツハイマー病になりやすいことを明らかにしました。また、特にapoE4因子のない人についてこの関係が強いことがわかりました。
この因子を持っている人については喫煙とアルツハイマー病との関係は認めませんでした。
オット博士らは、喫煙は痴呆やアルツハイマー病に発病する危険度を倍加させると指摘しています。
同センターのグループは以前、疫学的調査で喫煙がアルツハイマー病の予防的因子の可能性を指摘したことがありますが、この調査はそれを覆すものといえます。
同調査報告はイギリスの医学雑誌「Lancet」(1998年:351:1840-43)に掲載されています。
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