パーキンソン病は、脳神経系の病気の中でもっとも患者数の多いもののひとつです。
日本全国で10万人以上の患者が存在すると思われます。
残念ながらパーキンソン病の原因はいまだに詳しくわかっていません。
そのため完治は難しい病気です。
実は年を取ると誰でもパーキンソン病になる可能性があります。
多くの研究から10歳年を取るごとに平均10%程度のドーパミンニューロンが死んでいくことがわかっています。
大体正常の20%位にドーパミンニューロンが減ってしまうと症状が出ると言われています。
単純に、20歳のときを100%だとして計算すると、100歳で私たちの殆どがパーキンソン病になることになります。
実際、私たちが持つ「お年寄り」のイメージを極端に表現すると、パーキンソン病患者そっくりになります。
万事がスローで、物覚えが悪くなり、ちょっと前かがみになって歩き、転びやすく、震えが来たりするのはドーパミンが減少していることと無関係ではありません。
そういう意味でいえば、パーキンソン病は一部の不幸な人の病気ではありません。
私たちが元気で活動的な老後を送るためにも、パーキンソン病の原因を突き止めることは重要なことなのです。
パーキンソン病は、19世紀のはじめに、イギリスのジェームズ・パーキンソンという医師が最初に報告したことから、この名前がつきました。
パーキンソン病は、まず手足のふるえが50歳過ぎごろから目につくようになります。
そして、ゆっくりとし病状が進行するのが普通です。
パーキンソン病の一般的な経過は体の片側から症状が始まる場合が多く(1度)1~2年で両側(2度)そしてバランスが悪くなり(3度)進行すると介助なしでは日常生活ができなくなり(4度)ついに寝たきりになる(5度)こともあります。
しかし、40歳前に発症する若年性パーキンソン病や、70歳を過ぎてからの発病もあります。
病気の進行具合も、比較的早い場合もあれば、10年以上たってもあまり悪化しない場合もあります。
パーキンソン病は治療の進歩が著しく、一般には天寿をまっとうできる病気です。
基底核というのは、体のバランスをとったり、運動を調節するのに重要な役割をしています。
中脳黒質(こくしつ)という部分があり、ここの神経細胞ではドーパミンという重要な神経伝達物質をつくって基底核に連絡します。
パーキンソン病になると、この神経細胞が減ってドーパミンの産生が少なくなります。
そして、神経間の情報伝達がうまくいかなくなり、運動が下手になるのです。
しかし、黒質細胞がどうして減るのか正確な原因はわかっていません。
パーキンソン病になると、ふるえが出ます。それとともに四肢の筋肉がかたくなります。
筋肉がかたくなってしまうと関節の動きも円滑でなくなり、無理に動かすと歯車のようなガクガクした動きになります。
運動の速さは低下し、運動の量も減り、じっとしている傾向が目立ちます。
この「手足のふるえ(振戦)」、「筋肉のこわばり(固縮)」、「動きが乏しくなる(無動)」、「バランスが悪くなる」という4つの症状がこの病気の特徴です。
これらに伴い無表情、低い声、言葉の不明瞭さ、字がうまく書けない(小字症[しようじしよう])、動作開始の遅さ、姿勢を保つことの困難さ、歩きにくさなどが出てくることになります。
原因がわからないことを医学用語では「特発性」といいますが、特発性にパーキンソン症状が出る代表がパーキンソン病です。
このほかには、線条体黒質変性症(せんじようたいこくしつへんせいしよう)、進行性核上性麻痺(しんこうせいかくじようせいまひ)などの難病があります。
これに対して、何か原因がある場合、例えば多発性脳梗塞(たはつせいのうこうそく)などの脳の血管障害でも同じような症状が出ます。
また、いくつかの薬の副作用でパーキンソン病と同じような症状が出ることもあります。
このように、パーキンソン病のような症状があらわれる疾患を総称し、パーキンソン症候群といいます。
代表例を表にまとめてみました。薬で起こるパーキンソン症状というのは意外に多いので注意が必要です。
パーキンソン症候群 | 特徴 | |
---|---|---|
症候性 原因があるもの | 脳血管障害性 | 歩行障害、軽度痴呆症、嚥下障害を伴う。 頭部MRIで血管障害を確認できる。L・ドーパは無効 |
薬物性 | 原因薬剤の服用。歩行障害で発症することが多い。 臨床症状はパーキンソン病と区別がつかない場合がある | |
変性疾患 原因不明のもの | レビー小体型痴呆 | パーキンソン病の症状と痴呆症状をあわせもつ |
線条体黒質変性症 | L・ドーパの反応が悪い。 頭部MRIにて特徴的な所見がある | |
進行性核上性麻癖 | 転びやすい。嚥下障害(よくむせる)。眼球運動障害。 | |
ジャイ・トレージャー症候群 | 自立神経障害(起立性低血圧)が強い |
線条体黒質変性症、ジャイ・トレージャー症候群、および脊髄小脳変性症のオリーブ橋・小脳萎縮症をまとめて多系統萎縮症という。
3疾患とも進行すると、パーキンソン症候群、自律神経症状、小脳症状を呈する。
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