認知症の種類

一口に認知症といっても様々な種類があります。

アルツハイマー型認知症原因は不明。特効薬も治療法もありません。

 

アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)ってなに?

1907年、ドイツの精神科医であるアロイス・アルツハイマー博士が初めて報告した病気で、報告者である博士の名前から、Alzheimer's basket cells と名づけられました。日本では、アルツハイマー型認知症、もしくはアルツハイマー病(AD)と呼ばれ、世界的に最も多い神経変性疾患です。

この病気は、脳内で特殊なたんぱく質異常が起こり、脳内のニューロン・シナプスが脱落し、次第に神経細胞が壊れ、やがて脳が萎縮することで、知能や身体の機能も衰えていきます。また、二次性の呼吸器合併症などによって最終的に死に至ることもあります。アルツハイマー病の原因は未だ解明されておらず、特効薬といえる薬も治療法もありません。

A・アルツハイマー博士ってどんなひと?

アロイス・アルツハイマー博士

▲アロイス・アルツハイマー博士
(Aloysius "Alois" Alzheimer, 1864/6/14 - 1915/12/19)

ドイツの精神医学者であるアルツハイマー博士は、フランクフルト市立精神病院勤務などを経て、エミール・クレペリン(ドイツ精神医学の源流)のもとでルードウィヒ・マキシミリアン大学に勤務しました。

1901年、アウグステ・Dという嫉妬妄想・記憶力低下などを主訴とする患者を診療し、1906年に南西ドイツ精神医学会で症例として発表しました。この疾患概念は、エミール・クレペリンが1910年に著述した精神医学の教科書で大きく取り上げられ、アルツハイマー病、アルツハイマー型認知症などの疾患名として確立されました。また、いわゆる「認知症」の多くを占める疾患として広く認知されています。

アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)の原因は?

アルツハイマー型認知症患者の脳の老人斑

▲アルツハイマー型認知症患者の脳の老人斑

アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞の減少、脳の萎縮、脳への老人斑・神経原線維変化の出現を特徴とします。これは、脳の中にβアミロイドと呼ばれるたんぱく質が蓄積することが原因の一つとされていて、健全な神経細胞を変化・脱落させて脳の働きを低下させ、脳萎縮を進行させると考えられています。しかし、はっきりした原因はいまだに分かっていません。

アルツハイマー型認知症の発症と進行は比較的緩やかですが、確実に悪化していきます。多くの場合、物忘れ(記憶障害)から始まり、時間・場所・人の見当がつかなくなります(見当識障害)。物忘れは、病気の進行とともに「最近のこと」から「昔のこと」を忘れるようになり、次第に過去の記憶や経験などを失っていきます。

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アルツハイマー型認知症の特徴は?

アルツハイマー型認知症患者の脳の老人斑

▲アルツハイマー型認知症患者の老人斑

アルツハイマー型認知症の特徴は、大脳の後半部(側頭葉、頭頂葉、後頭葉)の萎縮が次第に進むことです。初期段階では、脳の側頭葉と呼ばれる部分の海馬の脳神経細胞が減り始めます。海馬は短期記憶をつかさどる場所なので、「今さっきの記憶」が思い出せなくなります。

また、脳組織の変化としては、「アミロイド」と呼ばれるたんぱく質の沈着(アミロイド斑とか老人斑という)と非常に溶けにくい「タウたんぱく」からできる神経原線維が出現します。アミロイドの沈着は、認知症患者でない老人にもしばしば認められるため、老人斑とも呼ばれます。アルツハイマー型認知症患者においては、比較的早期から側頭葉を中心にこの沈着がみられ、その程度も強いのが普通です。これが脳の後半部の萎縮の原因です。こうした変化とともに、正常な神経細胞が徐々に脱落し、認知症障害の状態になっていきます。

病理学者のブラークは、アルツハイマー型認知症を6段階に分けていて、認知症の症状が発症し始めるのは3期の終わりから4期の始めにかけてとしています。つまり、脳の神経組織の変性は、認知症の症状が現れるよりかなり前から始まっていることになります。アルツハイマー型認知症は、極めて長い経過をとる進行性の病気といえます。

病気の原因はまだ判っていません。しかし、全体の10%を占める「家族性アルツハイマー病」ではいくつかの遺伝子異常が判明、アミロイドたんぱくの沈着や神経細胞脱落のメカニズムも次第に明らかになってきました。一方、非家族性のアルツハイマー病でApo E(アポ・イー)という物質に関する遺伝子異常が多いことがわかっています。

痴呆症状は70歳頃から出ることが多く、男女比は2:3と女性に多く、症状が出てから死亡までの平均罹病期間は約5年といわれています。発症時期ははっきりせず、徐々に痴呆が進み、最後は全身衰弱や肺炎などの感染症で死亡する場合がほとんどです。

その間、歩行障害や、筋肉が固くなる、失禁などの身体症状を伴うことがあります。また、時間や場所を正しく認識する「見当識」が次第に崩壊し、幻覚や妄想が現れたりしますが、本人はその病識がなく、無欲状態やうつ状態、もしくは多動、いらつき、不安、だれに対しても強い敵意を抱くなどの精神症状を伴うことがしばしばです。これにより、社会的行動と個人の習慣も次第に崩壊していきます。

特徴は…
  • 早い時期から診断可能
  • 進行すると家族の顔も分からなくなる
  • 早ければ40歳代からの発症し、進行も早い
  • 患者は、紙に立体図形が描けない
発症する過程は…
  • 脳の中にβアミロイドと呼ばれるたんぱく質が増え、溜まりだす(患者は、分解酵素の中性エンドペプチドが少ない)
  • タウたんぱくが増加する
  • 神経細胞死が起きる
  • アルツハイマー型認知症が発症する

アルツハイマー型認知症の症状は?

前駆症状
  • 知的能力低下が見られる2~3年前から、軽度の人格変化が起こる(頑固になった、自己中心的、人柄に繊細さがなくなったなど)
  • 不安・抑うつ症状が出る
  • 睡眠障害が出る
  • 不穏、幻視妄想を認めることが多い
第一期に出る症状
  • 健忘症状・・・ものごとを忘れる
  • 空間的見当識障害・・・道に迷う
  • 多動・・・徘徊を繰り返すようになる
第二期に出る症状
  • 高度の知的障害、巣症状(失語、失行、失認)
  • 錐体外路症状(筋固縮)・・・パーキンソン病と間違われることもある
第三期に出る症状
  • 高度な認知症の末期で、しばしば痙攣・失禁が認められる
  • 拒食・過食、反復運動、錯語、反響言語、語間代(例: ナゴヤエキ、エキ、エキ)がみられる

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