これまでの認知症の薬物療法は、記憶障害などのために二次的に現れる症状を対象にしたもので、これらの薬を単独か組み合わせて使用し、症状を軽減するための治療が大部分でした。
しかし、現時点では、認知症の根本的な薬物治療は困難です。
そのため、最近は、周辺症状である「幻覚・妄想・いらだち・不安・うつ状態・攻撃性(暴力)・興奮」などの症状のコントロールを主な目的として薬物療法が行われるようになってきました。
現在、症状をコントロールするために使われている薬は以下の通りです。
しかし、このような薬物療法にはしっかりした使用方法のためのガイドラインがなく、それぞれの主治医の経験によって行われているのが現状です。
それゆえに、薬を使い過ぎてしまったり、転倒の原因になってしまったりすることが少なくありません。
これを改善しようと、現在、薬物療法のガイドラインを学会などでまとめようとしているところです。
認知症の記憶障害そのものに対する治療薬は長いことありませんでしたが、「アリセプト」という名前の薬が1999年に日本で開発されました。それまでの精神安定薬とは原理がまったく異なるもので、認知症の薬としては非常に画期的なものです。
アルツハイマー型認知症の治療・改善薬として、すでに世界約60カ国で使用されています。
過去、アルツハイマー型認知症の薬として脳代謝改善薬が使われていましたが、当時の厚生省から効果が認められないとして保険承認を取り消されてしまいました。
それから時を経て登場した、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤に大きな期待が寄せられています。
アルツハイマー病患者の脳では、情報の担い手となる様々な神経伝達物質を作る神経細胞が破壊されています。
特に、神経伝達物質の中でもアセチルコリンという、伝達物質を作る神経細胞の破壊が進んでいます。
アリセプトは、アセチルコリンを分解するアセチルコリンエステラーゼという酵素の働きを妨げることで、脳内のアセチルコリンの濃度を高めて症状を改善する効果があるといわれています。
この薬を飲み続けると、1年程度といわれていますが、記憶力や判断力が改善されます。また、認知症の進み方も遅くなります。
もちろん、この薬は認知症を根本的に治す薬ではありませんし、効能に対して“過剰期待は禁物”という現場の医師の声があるのも確かです。
今後の医療現場での実績に注目していきたいものです。
新薬の種類と特徴
成分名 | 商品名 | 特徴 |
---|---|---|
ガランタミン | レミニール | コリンエステラーゼ阻害薬 内服薬 |
メマンチン | メマリー | グルタミン酸受容体阻害薬 内服薬 |
リバスチグミン | リバスタッチパッチ イクセロンパッチ | コリンエステラーゼ阻害薬 貼付剤 |
アリセプトの発売から10年以上経て、最近新たに認可を受けたり、認可待ちの状態にあるのが、上記4種類の新薬です。従来使用されてきた治療薬のドネペジル(アリセプト)や、今後販売されるガランタミン(レミニール)、リバスチグミン(リバスタッチパッチ、イクセロンパッチ)は、神経伝達物質アセチルコリンの分解を行なうコリンエステラーゼを阻害し、その結果、神経細胞間の神経伝達物質量を増加させることにより作用を発揮します。
リバスタッチパッチとイクセロンパッチは初の貼付剤ということで、介護者が薬の摂取を確認しやすいことが利点といわれています。またアリセプトと同じ作用機序ですが、違う成分の薬が使用できることは、各患者の体質にあった薬を選択する幅が広がるため、非常にメリットが大きいと考えられます。
メマンチン(メマリー)は、神経細胞死の進行に関与するNMDA受容体を阻害することにより、認知症の進行を防ぐ薬です。新規の作用機序であるため、アリセプトなどのコリンエステラーゼ阻害薬との併用が可能であり、多剤併用療法による治療効果の増大が期待されています。
上記の臨床薬に対し、ヤマブシタケは、脳内のグリア細胞から分泌される神経成長因子(NGF)の増加を介して神経細胞の生存促進、活性化を行うことで認知機能に作用すると考えられています。作用機序が全く異なるため、併用することに大きな問題は無いと考えられます。
また、ヤマブシタケが上記の臨床薬と同じようなコリンエステラーゼ阻害作用およびNMDA阻害作用を持つ可能性は極めて低いと考えられます。これらの薬剤は、作用部位、酵素の細かな種類、投与量などを高度に検討して設計された薬剤でなければ、神経毒となってしまうからです。
よって、今回挙げた新薬を服用している患者に対しても、ヤマブシタケ製品を摂取することは可能であり、複数の作用点で認知機能低下抑制、改善に作用することになるため、相乗効果が見られる可能性も十分にあると考えられます。
高齢になると、様々な疾病になります。
そのための治療薬の中には、その副作用として認知症発病を抑える効果があるものもあります。
慢性関節リウマチで、長期にわたって炎症を抑える薬剤を服用している患者は、アルツハイマー病の発生が目立って少ないことがわかっています。
また、アルツハイマー病の病態として何らかの炎症性変化があることもわかっており、少しずつ病態を解明する手がかりが得られているようです。
アメリカJohns Hopkins Bloomberg School of Public HealthのPeter P. Zandi医師らは、高血圧の治療薬のひとつである降圧利尿剤、特にカリウム保持性利尿剤(例:アルダクトンA)を服用し、治療をしている人はアルツハイマー病になる危険性を下げる可能性があると発表しています。
同医師らは、アメリカ・ユタ州の地域住民を対象に行われている加齢と記憶に関するThe Cache County Study で、降圧剤の服用とアルツハイマー病の発病の関係について調べました。
1995年から1997年にかけて調査対象者について認知症の有無などを調べ、3年後に同様の調査をしたところ3308人の生存者のなかで104人にアルツハイマー病を認めました。
発病者群と非発病者群で各種の降圧剤の服用状況を比較したところ、降圧剤を服用することでアルツハイマー病の発病を約36%少なくし、作用別に降圧剤の服用状況で比較したところ、降圧利尿剤で43%少なくし、特にカリウム保持性降圧利用剤で74%少なくしていることを認めました。
この種の降圧利尿剤がなぜアルツハイマー病の発病を少なくしているかについては今後の研究が必要とされています。
これは、アメリカの神経学雑誌「Archives of Neurology」の2006年3月13日号で論文発表されました。
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