きちんとした食事や睡眠、適度な運動を心がけるなど生活習慣を見直せば、発病の確率は減らせるはずです。
また、趣味や職場以外の社交場を持つなど、毎日を生き生きと暮らす工夫も大切です。
多くの研究者が、認知症と食事、身体運動についての研究報告を発表しています。
そのどれもが「バランスの良い食事」と「適度な運動」が大切であると指摘しています。
できるだけ早い時期から体に気をつけた生活を送ることが生活習慣病を抑え、結果的に認知症の予防になるということなのでしょう。
「中年期に健康的な食事を摂取して運動を行うと、数十年後に認知症に罹りにくくなる可能性がある。」これは、第10回国際アルツハイマー病・関連障害会議(スペイン、マドリード)で研究者らが伝えたメッセージです。
同会議で発表された研究では、健康的な食事の摂取と身体的に活動的であることが効果を及ぼす可能性が強調されました。これは、早く始めれば始めるほど良い効果をもたらすそうです。
これらの研究のうち2件は、フィンランドで成人1,400名以上を対象に実施されたCardiovascular Risk Factors, Aging, and Incidence of Dementia(CAIDE)プロジェクトによるものでした。
参加者は中年期に同研究に参加した時点で、食事調査を受けるとともに、仕事関連および余暇時間の身体活動量を記録されました。
それから約20年後、余暇時間に身体的に活動的であった人たち、および食事に魚と多価不飽和脂肪が多かった人たちの方が、活動的でなかった人たちや乳製品やスプレッド(※1)から多くの飽和脂肪を摂取した人たちより、頭脳が明晰で記憶力も良好な傾向がありました。
こうしたパターンは、認知症の最も一般的なタイプであるアルツハイマー病のリスク上昇に関連するアポリポ蛋白(Apo)E e4遺伝子を保有する人たちにも認められました。
この食事研究は、フィンランドのクオピオ大学のMarjo Laitinen, MScらが行ったものです。
また、身体活動研究を行ったのは、カロリンスカ研究所(スウェーデン、ストックホルム)のSuvi Rovio, MScをはじめとする研究者らでした。
Laitinen氏らの知見は2件の北米の研究と一致しています。
※1:スプレッド=パンやクラッカーに塗るピーナツバター、ジャムなどのこと
カナダでは、64歳以上の成人4,600名以上を対象に研究が行われました。
そして、5年間に被験者454名が認知症以外の認知障害を発症しました。
また、研究開始時点で身体活動レベルが最高であった被験者は、認知症意外の認知障害を発症する可能性が最も低いことも明らかになりました。
年齢、性別、教育レベルなどのリスク因子を補正しても結果は変わらなかった、とLaura Middleton, MScらは報告しています。
Middleton博士はDalhousie大学(ノバスコシア州ハリファックス)に勤めている。
また、ボガルサ(アラバマ州)で実施された長期Bogalusa Heart Studyにより、比較的若年であっても、健康状態良好であることは脳に有効である可能性が示されています。
この研究において、チューレーン大学神経学教授Benjamin Seltzer, MDらは、24-44歳の Bogalusa Heart Studyの被験者72名に関するデータを調査しました。
被験者らは、記憶、単語認知などの心理的スキルの検査を受けました。
そして、被験者が高齢であるほど、また、インスリン(血糖を調節するホルモン)血中濃度の高い被験者ほど、いくつかの検査のスコアが悪いという結果が出ました。
「これらの知見から、生涯を通じて心血管系の健康を維持することの重要性が強調される」とSeltzer博士らはいいます。
彼らは今後、小児期における心臓の健康が中年期の認知機能に影響を及ぼすかどうかを研究する予定だそうです。
(ICAD2006:10th International Conference on Alzheimer's Disease and Related Disorders, Madrid, Spain, July 15-20, 2006. News release, Alzheimer's Association.)
( WebMD Medical News スペイン ICAD2006 日本語版2006年7月18日版より)
アメリカのUCLA(カルフォルニア大学ロサンゼルス校)の精神・行動医学科のGary W. Small医師らは、加齢に関係するもの軽度の記憶障害に健康で長寿なライフスタイル(下記)がどのように影響するかを調べました。
35歳から69歳までの17人の認知症はないが記憶障害を訴える人たちにを2つのグループに分け、第1グループ(8人)については脳に健康的な食事、リラックス運動、心臓血管系をよい状態に維持、言語記憶訓練の心理運動を行いました。
第2グループ(9人)についてはそれまで通りの生活を送ってもらいました。
これを2週間続け、試験前と後で記憶能力の自己評価、認知機能テスト、PETによる安静時の局所の脳代謝について調べました。
その結果、介入した第1グループの人は言語流暢性が高くなり、脳の局所(左側背側前頭葉前部皮質)で5%の代謝の減少がありました。
第2グループでは変化はありませんでした。
これらの結果から、心理的身体的な運動を加えた健康的なライフスタイルは認知機能と脳代謝に有意な効果があると、この研究者は結論付けました。
また脳局所の安静時に代謝が低下したことは作業記憶の関係する脳の局所の認知機能を高めることに関係があると推測しました。
この研究は、アメリカ老年精神医学会雑誌American Journal of Geriatric Psychiatryの2006年6月号に掲載されています。
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